放送現場の疑問・視聴者の疑問

「違法」と「不法」の違いは?

放送で、「違法駐車」や「不法入国(滞在)」など「違法~」や「不法~」という言い方をよく聞きますが、「違法」と「不法」の意味・内容に、どのような違いがあるのでしょうか。

「違法」と「不法」は、ほぼ同じ意味を持つことば(類義語・同義語)として使われることが多いのですが、次のようなニュアンスの違いがあります。
違法・・・法律に違反していること
不法・・・法律に違反していることのほかに、反社会的な行為を含む このようなニュアンスの違いから、一般に放送では次のように使い分けています。
<例>違法・・・~建築 ~駐車 (○○店の)~営業
不法・・・~侵入 ~入国 (ゴミの)~投棄 価格を~につりあげる (宅地の)~造成

解説

「違法」「不法」について、国語辞書では次のように説明しています。

  • (1) 『新明解国語辞典 第6版』三省堂)
  •    違法・・・ 法(律)にそむくこと。「~行為」「~性」 (対義語)⇔適法
  •    不法・・・ 法にはずれること(様子)。「銃の~所持/~侵入」
  • (2) 『角川必携国語辞典』 違法・・・ 法律にそむくこと。「~行為」
  •    (類義語)不法・非合法  (対義語)⇔適法・合法 
  •    不法・・・ ①法律やきまりにそむくこと。「~侵入」「~な手口」
  •          (類義語)違法 
  •    ②道徳にはずれたとんでもないこと。「~をはたらく」
  •          (類義語)不当
  • (3) 『広辞苑 第6版』(岩波書店)
  •    違法・・・ 法律または命令にそむくこと。「~駐車」
  •    不法・・・ 法にそむくこと。人の道にたがうこと。
  •    「~に占拠する」「~侵入」

また、法律用語の専門解説書の『有斐閣法律用語辞典』は、「違法」について次のように記しています。「ある行為ないし状態が法令に違反し、又は違反していること。適法の反対概念。法令に対する違反とかかわりなく、単に道徳上非難されるべきにとどまる場合は、不当な行為であっても、違法とはいえない。『不法』もおおむね同義で用いられるが、どちらかといえば、実質的・主観的観念に重きを置いた場合に用いられることが多い」

(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.19参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島秀雄)